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December 30, 2008

民主党は医療崩壊を食止めることができるか?

今の医療崩壊は最近起こったものではなく、平成初期からの医療政策の誤りが導いたものであることは少しでも医療問題に関心のある識者には自明のことである。政策の責任が政権与党である自民党にあるとすれば、野党の民主党は今の流れを変えることができるかもしれないと考えるのは極めて自然なことである。
そこで民主党の医療政策に関するマニフェストがどうなのかを調べてみた。

以下に医師不足に関する民主党のマニフェストを引用する。

 医師不足を解消して、安心の医療をつくる。

● 医師・看護師等の配置を適正化する緊急行動計画を策定し、医師不足を解消します。特に、産科・小児科の医師不足は早期に解消します。

● 女性の医師・看護師等が仕事を続けやすく、また、復職しやすい環境を整備します。そのために、院内保育所の整備や復職のための研修を進めます。

● 全国どこにいても、最善のがん治療や最新のがん情報が受けられる体制をつくります

医師不足を解消すると言いながら、具体策で医師数を増やすと言わないところがポイントではあるが、具体策を順にみてみよう。

 まず第一は医師・看護師の適正配置を行い、特に産婦人科・小児科に重点を置くというものである。適正配置で問題が解決するためには計画を策定できる必要な医師数を確保し、それを維持できるものでなくてはならない。必要な医師数は何人かというと議論が複雑になるので民主党の言うとおり医師総数は増やさないと仮定して、維持できるかどうか考えてみよう。
 小児科、産婦人科に共通する問題は地方の職場を離れる医師が多いことである。特に両科に多い女性医師ではそれぞれの学会の集計で、平均勤務年数は5,6年と報告されている。6年かけて養成した医師が同年働いたのみで勤務を辞めているのである。ちなみに、このような実態を厚生労働省は調査してこなかったため国の統計には現れていない。男性であれば廃業までするケースは少ないと思われるが、お産は取り扱わない、時間外診療は行わないなどの方法で、期待される業務に従事する医師数は確実に減少していく。国は仕事をしようといういう医師に制約を加えることはできるが、辞めようという医師に仕事を強要することはできないのである。
 また、仮に医師免許を取得した医師の何割かに産婦人科・小児科への従事を強要した場合、かろうじて成り立っている他の診療科が医師不足に見舞われる可能性もある。小手先の配置計画では問題は解決しないのである。

 第二のマニフェストは女性医師・看護師が仕事を続けやすくする方策として院内保育所を整備しようというものである。民主党政策立案者が認識しているかどうかは知らないが、今、病院で話題になっているのは民間保育所がカバーできない夜間保育をどうしようかという話であって昼の保育所ではない。そして夜間保育所を利用しようという医師・看護師は家庭を犠牲にしてでも勤務を続けたいという特殊な人たちである。特に医師では人数が足りないため交替勤務は存在しない。昼働いて夜間も働かなくては地域医療が維持できないから何とかしようという数少ない献身的な女性医師のために病院内夜間保育所を作ろうという動きが出ているのである。病院内夜間保育所を作れば医師不足対策になるなどという発想は現場をみていない証拠であろう。

 第三のマニフェストは全国どこにいても最新の癌治療を受けられる医療体制を作ろうというものだが、これは現在行われている癌拠点病院制度、あるいはがんセンターの配置を意識しているものと思われる。医師不足が解決できないままでこのような制度を作ったらどうなるのであろうか?厚生労働省の統計では50歳以下の勤務医の総数は平成10年以降まったく増えていない。このような状況で巨大な癌専門病院ができれば、ここに勤務医・看護師が吸い取られ地方の診療中核病院はますます疲弊していく。そして、がんセンターには地域の病院で扱えなくなったがん難民が軽症・重症を問わず押しかけ、入院数ヶ月待ちなどという状況が作り出されるのは明かである。かつて某県・某知事は国の補助金を得て巨大ながんセンターを作り、わが県は医師は少ないが立派ながんセンターがあるから心配ないと言い張っていたが、医療状況に何ら改善のみられなかったばかりか地域の医療崩壊が一層すすんだことはいうまでもない。何年も前の厚労省の施策を焼き直ししても魅力的なマニフェストは作れないのである。

 ここまで民主党の医師不足に関するマニフェストを読んできて、どこかで見たことがあるなと気がついた。マニフェストの1,2は2006年に発表された「日本医師会による医師確保に関する見解」そのものなのである。民主党の政策立案者がどのような人物かは知らないが、来る衆議院選挙を戦うために日本医師会の主張を取り入れようとするのは大きな間違いである。
 そもそも日本医師会は国民の信頼を得ておらず集票能力もない。また、医療の青写真を作る能力もない。それに気づいた自民党は日本看護協会の出身者を閣内に入れることはあっても医師を入れることはない。唯一の例外は公明党の推薦があった場合のみである。
 先週の12月21日に放映されたNHKスペシャル「医療再建 医師の偏在 どう解決するか」では、緻密に集められた資料を参考に各界の代表者が対策を真摯に議論していた。その中で日本医師会の見解がいかに実情にそぐわないものであるかが明白となり、日本医師会竹嶋副会長が大変参考になったと発言せざるを得なかったのは印象的だった。医政局長の話のほうが嘘か本当か知らないが、まだしも説得力のあったことを付け加えておく。

 以上、民主党の医師不足に関するマニフェストにケチを付けてきたが、小生は民主党への政権交代を切望しているものの一人である。医療がガンジガラメの呪縛に縛られたままでは地方の医療崩壊を止めることはできない。新たな政権で地域医療の現場をしっかり見つめ、せめてNHKなみの情報収集を行い本当に有効な対策を立ててくれることを願っている。

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